本調査は、日本国政府が従来実施してきた南極海における鯨類資源の持続的利用を目的とした資源調査(非致死的調査)を継続するもので、昨年6月30日の国際捕鯨委員会(IWC)脱退後、第1回目の調査航海となります。 本計画は、日本国政府が策定し、昨年5月に開催されたIWC/科学委員会、同7月の南極の海洋生物資源の保存に関する委員会(CCAMLR)並びに同11月の北西大西洋海産哺乳動物委員会(NAMMCO)において支持されています。
調査目的は、大型鯨類の資源量推定に必要な目視データを収集することに加えて、個体識別の記録(写真撮影)や衛星標識の装着、バイオプシー試料の採集を行ってこれら鯨類の資源管理に有用な情報を収集することです。
調査船 第二勇新丸は、令和元年12月2日に宮城県塩釜港より出港し、令和2年1月12日から2月6日まで26日間にわたり、南緯60度以南の南極海において鯨類目視調査やバイオプシー試料の採集などを実施して、3月19日に同港に帰港しました。
本調査は、当研究所を含む国内の鯨類研究機関が中心となって計画の立案と結果の分析を主導します。 調査航海は、当研究所と水産庁が協力して実施しました。
(1) 南極海における大型鯨類の資源量およびそのトレンドの研究
(2) 南極海における大型鯨類の分布、回遊ならびに系群構造の研究
航海日数:
令和元年12月2日(塩釜港出港)〜令和2年3月19日(塩釜港入港) 109日間
調査日数 (調査海域):
令和2年1月12日(開始)〜令和2年2月6日(終了) 26日間
本年度の調査範囲は、IWCの管理海区の一つ、第III区西側海域の一部で、南緯60度以南の東経0度から15度までの海域(図1)です。
図1. JASS-A調査海域、水色:全調査海域、青:本年度の調査海域
磯田辰也(調査団長:(一財)日本鯨類研究所 主任研究員)他2名
第二勇新丸(747トン、共同船舶(株)所属、大越親正船長以下17名)
指定鯨類科学調査法人・一般財団法人 日本鯨類研究所
3,987.8 海里 (約 7,385.4km)
クロミンククジラ 124群 211頭、ザトウクジラ 102群 191頭、ナガスクジラ 81群 150頭、シロナガスクジラ 22群 24頭、イワシクジラ 1群 1頭、マッコウクジラ 14群 15頭、ミナミトックリクジラ 9群 30頭、シャチ 2群 18頭
(1) 距離角度推定実験
目視観察者ごとの鯨類の発見角度と距離の推定精度を求めるために距離角度推定予行演習ならびに本実験を実施しました。
(2) 個体識別写真撮影(個体数)
シロナガスクジラ 20頭、ザトウクジラ 14頭、シャチ 5頭
(3) バイオプシー試料採集(個体数)
シロナガスクジラ 10頭、ナガスクジラ 11頭、クロミンククジラ 8頭
(4) 衛星標識装着
ナガスクジラ 10頭、クロミンククジラ 8頭に対して衛星標識を装着しました。
(5) XCTD(投下式電気伝導度水温水深計)による海洋観測
観測点 75ヵ所で水深0m〜1,850mまでの水温と塩分濃度を測定しました。
(6) 海洋漂流物(マリンデブリ)観察
南緯60度以南において、プラスチック製ブイ 1個、ポリタンク 1個、ペットボトル 1個を発見し、記録を行いました。
(7) ARGOフロートの投入
国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)より依頼を受け、南緯40度付近でアルゴフロート1機を投入しました。
写真:2019/2020年度南極海鯨類資源調査(JASS-A)の様子
希少種 シロナガスクジラの遊泳 | 遊泳するナガスクジラ(本種の特徴である白い右下顎が確認できる) | 海氷の間を浮上するクロミンククジラ |
バイオプシー試料採集実験(シロナガスクジラ) | 個体識別写真の撮影(ザトウクジラ) | XCTDによる海洋観測 |
調査の動画は、当研究所Youtubeチャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCz3c9IIMiQPVeryAogmJIig)でご覧になれます。